毎日が楽しかった。

でも、私は知っている。


平穏な日々は、長くは続かないということを──



「ねえ、真白さんと水瀬さんって純粋だよねー」

いつも通りの休み時間だった。

それなのに、いとも簡単に平穏は崩れた。



この人…小野さんの、友達…。



どくどくと心臓が嫌な音を立てる。

自分の鼓動が煩かった。

「えぇ?そうかなぁ?」

羽虹は慣れた様子でさらりと踵を返す。


そうだ、羽虹は私と違ってフレンドリーだし、友達も多いはず…。

彼女にとってはこんなの、日常の一ページでしかない。


「そうだよー、だって男の話とかしてんの聞いたことないし」

私たちがどんな話をしているか知っているということは、今までの会話に聞き耳をたてられていたのか、と全身に鳥肌が立つ。

「そうー?私は恋バナ興味なくもないけど」

「え、マジで?」

「天沢くんはやっぱりカッコいいなぁ、とか思ったりするよ?恋ではないけどねぇ」

羽虹の予想外の発言に、思わず目を見開いて彼女を見つめてしまった。

相手の女子も、そーなんだーと興味津々に羽虹に近づく。


い、いや…当たり前といえば当たり前…か。

天沢は「王子様」なんだから。


「やっぱり千晴様だよねぇ、ま、恨まれるから近づかないのが一番だけど」

「わかってるよー、私は目の保護してるだけだもん」

「それが一番だよねぇ〜。顔面国宝だし」

ケラケラと軽快な笑い声をあげて、一軍女子はその場を去っていく。

自由人、そして声がでかい。

やっぱり好きになれない。