「水瀬(みなせ)さん」
次の日。休み時間にいきなり話を振られた。
私の名前が教室に響いた瞬間、ざわめきが一斉に姿を消す。
教室内で声を発することなんて、一ヶ月に一回あるかも怪しい私だ。
明らかに顔が熱くなるのがわかった。
「水瀬さんって頭良さそうだよねー順位どれくらいなの?」
「えっと…高くも低くもないよ」
正直に言ったのだが、彼女は納得がいかない顔をする。
「え〜?一位は王子様で決定として、その下くらいにいるんじゃないのー?」
王子様、という響きに半ば呆れながら私は首を振る。
だいたい、私のような人間がトップ高校で一桁なんて取れるわけがない。
本当に感想を言い難いほどに普通の成績だ。
何かを言ってくる親とも別居していて、相手も特に私に興味がない。
これくらいが安泰。
努力はしているつもりだし。
上を目指すことにあまり意欲がない。
