泣いてる君に恋した世界で、



対面はできなくなってしまったけれど、俺は彼女の『大丈夫』を信じていた。

以前のように毎日LINEするようになったこともあって本当に完治へと向かっているように思えた。

とはいえ、「おはよう」「おやすみ」くらいの内容がトーク画面を開けばずらりと繰り返されている。中にはちょっとした彼女のボヤキが紛れている時もある。それを見ては口元が緩んでいった。

会いたい気持ちが大きいけれど、彼女が頑張っていることを思えばいくらでも耐えられた。スマホがあることに感謝している日々がここ最近の生活の一部になっている。


――ピコピコ

その音でスマホに飛びつく。

送り主はもちろん咲陽だ。


【槙田くん】
【今なにしてる?】

[今家でテス勉してる]


文面からして真面目に思えるだろうけれど、来週に迫っていることに気付いたのは今日なんだ。しかも来週といってもあと3日後。


【そうだったね笑
 まゆも言ってたな
 邪魔しちゃったね】

[気にすんなよ。どした?]

邪魔じゃないし。むしろ捗りそうだから俺的には大歓迎だ。

なのに彼女はどうしてこんなことを言うのだろう。

既読はついているもののなかなか送られてこない。きっと長文だ。

そう思って返事を待ちつつ難問の数学と再び向かい合った。

それから10分後だろうか。LINEの通知音が届いた。

開けばそこには――。


【やっぱ伝えたいことは退院してから言うね。
 テスト頑張ってね!あと3日だけど(笑)
 槙田くんは優秀だから大丈夫だよ!

またね。おやすみ】


あまりにも短い内容すぎて唖然と画面を見つめた。

あとから浮つくような感情に襲われて胸の内がくすぐったくなった。

退院したら伝えたいことってなんだろうか。もしかして……と期待が早まって体が熱くなった。


もしかしなくてもこれはアレか?俺の中じゃソレしか思い浮かばない。
なんて有頂天すぎる浅く馬鹿な思考なのだろうか。

その文字が頭に収まっていた数式より遥かに増えて、それは徐々に集まって大きく強調した。


俺に伝えたいことなんてソレしかないじゃないか。そうに決まってる。じゃないとこんな照れ隠したようなメッセージを送ってくるだろうか。

浮ついた心持ちで返信した。

すぐに既読がついて画面を閉じる。

この時間が幸せと感じてしまうのはおかしいだろうか。幸せ以外になにが思い浮かぶだろう。

ただただ、幸せ。
咲陽もそう思ってくれてたら嬉しい。



LINEの間隔が徐々に大きくなった頃。世はクリスマス一色になっていた。

イヴがやってきた頃には糸が切れたように音沙汰がなくなった。あまり考えないようにしてた頭でも連絡が途絶えるとなると不安と恐怖が俺を蝕んでいった。

そんな心情を必死に押さえ込んで母さんの命日を迎え、夜になればサンタになって羽星が用意したホットミルクとクッキーを綺麗に食べて枕元にプレゼントを置いた。

役割をやり遂げれば睡魔が襲って静かに眠りにつく。


翌朝自然に目覚めてスマホを手に取ると飛んだ。咲陽からLINEが届いてたからだ。

そこには、

【槙田くん、メリークリスマス!
 素敵な日を過ごしてね!
 私も退院に向けて頑張るよ!】
【早いけど、来年もよろしくね!】

俺が寝た後ぐらいに送られたんだと時刻を見て思った。

そしてもう少し起きていればと後悔した。

起きていたら話せたし、もしかしたらビデオ通話できたかもしれない。
俺にサンタがいるってんならそれは咲陽だ。

咲陽と話せただけでささやかなクリプレだ。話したかった。悔しい。

俺タイミング悪すぎかよ……。


後悔を滲ませながら即レスした。