やっとこっちを向いてくれた時は窓の外がオレンジ色に染まっていた。
まだ乾ききっていない彼女の目元を親指で掬い上げると目を見開いてそれからバツが悪そうに逸らした。久しぶりの照れた顔に自然と顔が緩んでしまう。
「……そんな顔でこっちみないでくんない」
「ごめん。好きだなって思って」
「っ、だから、そーゆーとこやめてよ」
私に振られてるのに、そう重ねて言われるけれどそれとこれは別モンなんだ。残念だったな。
「咲陽は俺のこと好きじゃないの?」
「は、ハア!? ちょ、ちょっと何言ってんの。槙田くんこんなキャラだった?変なのでも食べたの……あとそれも、やめてよ」
それとは何かとハテナを浮かべる俺に咲陽が「名前」と濁して言った。
恥ずかしがる彼女がこんなにも愛おしい。触れたい。
そんなわがままな欲を抑えながら自分の手を弄ぶ。
「ごめん」
「い、や。別にやめなくていいけ、ど……」
また口籠る。この口一文字時の心情は一体何を思っているのか知りたい。
「けど?」
言ってほしくてせがむように待ってみた。どうやら言ってくれるみたいだ。
呆れたのかため息なんか零される。
「あのね槙田くん。いきなり下の名前で呼ばれたら誰だって心臓が止まるんだよ!?
とにかく、心臓に悪いんです」
「そっか」
「あ、納得してないでしょ。本当に心臓止まるかと思ったんだから」
「納得してるからそんな力まなくていいから。心臓止まるのはごめんだからもう言わないk」
「それは駄目っ」
俺の両頬を冷たく小さな柔らかな手が挟んだ。
なぜか咲陽がその事態に驚いてた。
勝手に離れていこうとする手を引き止めるように彼女の手首を包んだ。
「や やだ。なにしてるの」
「いや、それはこっちの台詞。――咲陽って呼んでもいいの?」
隠したくて仕方ないその様子が愛らしい。
俺本当に人が変わってしまったようだ。
彼女の前でしかこんな感情が出せないし表情もきっと出せない。
あわあわする彼女を見つめる。
隠す術がなくて顔を背けるけれど、その横顔にまで惚れ惚れしている俺は相当重症なんだと思う。
「かわいいな」
「っ、ほんと変だよ今日の槙田くん」
「そうさせてるの咲陽なんだよな」
「バ、バッカじゃないの。ほんと変。いい加減諦めなよ」
「まだ諦めない。俺のこと嫌いじゃないでしょ?」


