12月に突入して俺はリベンジしに向かった。
人使いの洗いバイトで疲労困憊気味だけれど、そんなのお構いなしだ望月のこととなれば。
断られても突入する。そんな勢いで来たもののやっぱり304を目の前にするとぎこちなく弱気になるのはどうしてだろうか。しっかりしろと言わんばかりに拳を握る。
そして『大丈夫』と心の中で唱えてみせた。
深呼吸してドアを3回ノックすると薄い返事が来た。
俺だけどとかけるといつもの間隔で間が置かれ、やっぱり同じことを言われた。
だけど今回ばかりは引き下がらない。しつこい男認定されても構わない。
俺の心は純粋だ。
「望月に会いに来た」
そう言っても反応は同じ。
「顔が見たい」
「帰って」
「じゃあここでいいから話そ」
「無理。帰って。私は会いたくない見たくもない」
正直抉られそうなくらい心が穴だらけだ。多分出血してる。
たださ、やっぱり引き下がれない。
だって――。
「咲陽、泣いてんの?」
ずっと前から呼んでいたかのようにすんなり言えた彼女の名前。言うつもりは到底なかったのに。本能が急かしたかのようにそうさせた。
微かだけど中から啜るような音が聞こえるから。
俺の言葉に反応がなく、しばらく静けさと俺の鼓動が相まった時間が訪れた。
「咲陽」
「帰って」
「いやだ」
「帰って」
「無理。泣いてる咲陽放っておけない」
大きくドアを開けた。
久しぶりの咲陽に胸の奥底から溢れてくる。
相変わらず机にはスケッチブックとそのセットが置かれてあって、彼女らしい。
髪は耳が隠れるくらいまで伸びていて、あの頃が懐かしいと感じた。さっきまでどんな色のニット帽を被っているのかなんて想像していたのが恥ずかしい。本人には絶対に知られたくない。
そうだよな。髪は伸びるものだもんな。
「久しぶり」
そう言ってもなんの音沙汰もなし。
「今日は何描いてた?」
と言ったところでこれまた音沙汰なしだから、広げてあるスッチブックを覗いた。
「すげーなやっぱ」
ボソリと口から溢れるくらいそこには綺麗な景色があった。
この病室から見た景色だろう。窓を取り除いたあるがまんまの景色。
咲陽の世界はこう映って見えるんだと感心する。午前中の空だろうか。登校中に見た空は雲ひとつないほどの水色一色だった。1時限目の体育で見た空も水色だったのに、彼女の世界では一色どころか三色は存在している。俺だったら水色で塗りつぶしてる。
やっぱすげーや。


