あまりにも衝撃的で信じられなくて、でも信じるしかなくて。かける言葉が見つからなかった。その代わり抱きしめる力を少し強めた。それしか手段がなかった。
太陽が――望月さんの命があと3ヶ月も無いなんて一体誰が信じるというのだろうか。直接面識がない私ですら信じたくもない話だ。
先輩は何度も「死んでほしくない」って。「生きて」って。
極めつけは「あの子居なくなったら私――」って言葉を詰まらせるんだ。
悲痛な懇願に私の視界がぼやけ始めた頃。
外が異様に騒がしくなった。
天を駆け上がる音、心臓を、そこら中を震わせるほどの轟きが歓声に紛れている。
窓を開けて音の方へ視線をやるけれど校舎が邪魔して見えなかった。
二人して顔を見合わせて、真反対だったね、なんて笑った。
見えなくても光と音が届いているだけで充分だなと感じていると先輩が同じことを声に出していた。私もそれにうんうんと同感した。
「先輩が居てくれてよかった」
帰路を歩きながら独り言のように呟く私に「それはこっちの台詞」とはにかむ先輩。
「月影がいたからスッキリできた気がする」
ここまで泣いたのなんて赤ちゃん以来だと思う、なんて大袈裟混えて笑っているけれど実際そうなんだろうと受け取った。だって目の周りが腫れぼったい。街頭で照らされる横顔を見た時はしっかり泣きましたと書いてあるくらいにはしっかりと。
きっと、私より重たい。
「先輩、帰ったら真っ先に目冷やしてくださいね」
駅の改札抜けたところでそう声をかける。
あは、と笑ってから月影もな!と手を振られた。
一人になった時空を見上げた。星なんてどこにも見当たらない。深い群青が広がっているだけの空。それなのに綺麗だと思った。
槙田くんも見てるかな。
同じ空を見ていなくても同じ世界にいるあなたに恋した気持ちはほんもの。これは廃棄するけれど、これからはあなたの友達でいたい。
そんな願いを込めて送信した。


