「んで? その後は?」

「ないよそんなの」

「お友達ですってか、いっそ不健全だわ!」

「お前ね、別にいいだろ成人男女に純粋な友情があっても」

 あれから満とは特に何もない。顔を見たら挨拶はするし、エントランスで顔は合わせるし、おたがい何となく連絡は取るけれど特に恋愛方面への発展はしていない。

 というかそもそもお互いそういう目的で顔を合わせてるわけじゃないのだ。

「じゃあなんで連絡先なんて交換したんだよ」

「なんで知ってんだよ」

「工藤が言ってた」

 満にしてみれば隠すことでもないのか。

 そしてこいつはあの工藤愛理といまだに連絡をとる仲なのか。ただの同期ってのは嘘なんじゃないのか、むしろそっちのほうが気になった。

 純粋な友情とはいったけど、どちらかというと単なるお友達ではなく患者仲間だ。

 愛理は満の症状について知っているらしいし、奇病そのものについてはそういうものがあるんだなという理解くらいはあるんだろう。多分。

 発展したいとか、そういう感情はいまのところ一切ない。

 こちらだけの意見でなく、向こうにだって好みが存在するし、なにより満はあの様子だったら恋人を作ることそのものを敬遠しているんじゃないかと思う。

 自分と違って、彼女の病気は他人に大きくかかわる病気なのだから。

「だったらさあ」、涼嶋が口を開いた。

「なんで愛島さんのこと見かけるたびそんなに幸せそうな顔してんの?」

 俺はこいつのこういうところが本当に嫌いだ。