「…クソ。どこにいるんだよ」
俺は外を飛び出して、地元の駅周辺を歩き回っていた。
朝、見た淡いピンクのワンピースとサラサラした長髪の特徴。
携帯、持ってるのに、結愛に連絡できないとか今更…
俺、今までなにやってたんだろう。
探しても結愛がいないので、一旦俺は駅周辺にあった椅子に座り込んで、下を向いていた。
その時、誰かからの声がした。
「瑠翔?何してるの?」
その声は、結愛だった。
結愛は俺の目線に合わせて、上目遣いで聞いてきた。
かわいい。
その服も結愛も。
心の中では何回でも言えるの。
だけど、結愛の前にすると、何も言えない。
言おうとしたけど…言葉が出ない俺をなんとかしてほしい。
「……別に。お前に関係ない」
俺は結愛が優しく声かけてくれたのに、なんでそんなことしかできないの。
もう自分が悔しくなる。
俺は何をしているんだ。
心の中で、自分の髪を両手でぐしゃぐしゃにした。
結愛のこと、想っているのに……こんな。
俺は右拳を強く握りしめた。
まだ真正面にいる結愛に何といえばいいか分からなくて、ただ俺は下を向いていた。
「…じゃあ、これ置いていくね」
結愛は椅子の上に、お茶のペットボトルを置いて、去ろうとしていた。
去ろうとしている結愛をスローモーションで情景が浮かび上がった。
俺は頭の中が映画のように結愛の笑顔といろんな表情が俺の前で映った。
結愛の素直なところ。
自分に自信がないけど、自分を持っている。
顔を赤くして恥ずかしがる様子。
戸惑って、目をウロウロさせている結愛。
何かに喜んでる結愛。
怒って俺にあたってくる結愛。
悲しく泣いている結愛。
笑って楽しくしている結愛。
その状況が映画のように俺の目に映り、結愛が去りそうなのを俺は止めた。
その瞬間、俺は結愛の左手首を掴んだ。
「…瑠翔。ど、どうしたの?」
結愛は目を丸くして、俺を見てきた。
俺を見て、驚いた様子だった。
「……上杉とはどうした?」
俺は結愛の左手首を掴みながら、後ろを振り返った結愛の目を見て聞いた。