私も自分の机に戻ったが、智子の姿が見えなかった。
どうしたんだろうと自分の机に座って、考えていると、ガラッとドアが開いた。
そこには智子が息切れをして、自分の机にカバンを置いて、机に顔をつけていた。
「智子。珍しいね。ダッシュで来るなんて」
私は自分の机から立ち上がり、智子の机に向かい、声をかけた。
「はあはあはあ。家族全員で寝坊して。はあはあ。キツイ」
智子は脇腹をおさえて、鞄の中にあったお茶を取り出し、ゴクゴクと飲んだ。
「間に合って、良かったね」
机に臥していた智子の頭を私はポンポンとしながら、優しい声で私は言う。
クラスメイト達は、まだ朝礼が始まる前なので、ザワザワと騒いでいた。
「なんとかね。結愛。なんかさっき、囲まれてたんだって。大きい声で話す女子達の話聞いてさ」
智子は何かを思い出したのか、ハッと声を出して起き上がり、私に聞いてきた。
「……大丈夫だよ。瑠翔がいたから」
私は少し下を向いたまま、智子に言う。
そう、瑠翔がいたから。
女子クラスメイト達になにもされなかった。
「あんたら、付き合ってんだって。ほんとなの?」
智子は目を細めて、心配そうに私に聞いてきた。

