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 結愛も瑠翔と同様、落ち込んでいた。

「うわっ。初めてだ。瑠翔とけんかしてしまった…」

 私は自分の部屋で一人呟いた。

 どうしよう、瑠翔が悪いわけじゃなし。

 瑠翔は言おうとしてくれたって言ってたじゃん。

 なんで素直に受け取らなかったの。

 前までは瑠翔の言うことは少しは聞いてたのに、なんで反論したの。

 反論する理由なんて…ないじゃん。

 私は一人で呟いて、頭の中で瑠翔の話を繰り返し考えていた。

 考えたって何も出来ない。

 うーんとうなされていると、ブゥブゥブゥと携帯のバイブ音がした。

 自分の机に置いてあった携帯を取り、携帯の画面を見ると、智子から電話がきていた。

「もしもし、どうしたの?」

「一樹先輩から聞いたんだけど…喧嘩?したんだって…」

智子はうん?と優しい声で聞いてきた。

 一樹先輩、私と瑠翔のことでなんかあるとすぐに智子に教えるんだな。

 でも、感謝しかない。有難い。

 私が悩んでるのを知って…

 ありがとう、一樹先輩。

 私は心の中で感謝を込めた。

「うん、瑠翔の進路聞いて。なんで言わなかったのかって…。最初に聞きたかったのにって」

 私は右耳に携帯をあてて、俯いたまま答えた。

「……言ってることは分かるけど…瑠翔先輩だって色々考えて言おうとしたんじゃないの」

「…そうなんだよね、分かってる。私がその時納得すればいい話だっていうのは分かってる。でも、なんだかモヤモヤが止まらなくて…」

 私は自分の手で頭をくしゃくしゃにして、智子に声を発した。

「…それは、結愛が最初に聞きたかったけど…聞けなくてモヤモヤしてんじゃない」

 智子は私が伝えたいことを言語化してくれた。

「うん」

 私は返事をした。

「ならそう伝えればわかるんじゃないの?」
 
 智子はクスッと笑ってから、電話越しでも智子の表情が伝わってきた。

「いや、伝えたよ。でも、瑠翔は伝えようとしたって言うだけで」

 私はそう言うと、智子ははいはいと返事をしただけ。

「だったら、自分の感情を具体的に言えばいいと思うよ。モヤモヤとか」

 智子は私が言わなくちゃいけないことを教えてくれた。

「……そうだね」

 私は素直に返事をした。

 ほんとにその通りだ。
 私は言葉だけではなく、私の感情を言わないと…伝わらない。

 智子に連絡してみるねと言って、電話を切った。