さっきの話を聞いた私は不安を抱えていた。
この日は、新学期初めての登校日だった。
それまでに瑠翔ととは何回も会って話したり…ショッピングにも行った。
今までの瑠翔と違い、優しくてカッコいい。
でも、瑠翔の一部だけしか見えていない気がする。
俺様男子の瑠翔も彼の一部分であるけど、ほんとにちゃんとした瑠翔の内面も見られているのか不安になっていた。
帰り際、私と瑠翔は付き合ってから毎日終礼が終わると、玄関先で待って帰っている。
瑠翔はやっと授業が終わったのか玄関先に来て、下を俯いている私に声をかけた。
「結愛」
瑠翔は私の頭を撫でて、私を呼んだ。
「瑠翔…」
私も彼をみた瞬間、名前を呼んだ。
名前を呼んで、お互い向き合った。
玄関先では人がいるので、隅のほうへ行き、話をした。
「結愛。俺、県外に行って学びたい分野があるんだ。今まで黙っていてごめん。春休み中、言おうか迷っていたんだ」
瑠翔は私の左手を握ったまま、いつもより強く握られた手は震えていて不安そうな感じがした。
そういえば、春休み中に瑠翔と会った時に、何か言いたげな瞬間があったのを見逃していた。
私、瑠翔と話して会っていて、傍にいたのに……
「…ごめん。瑠翔。聞かなくて……」
私は申し訳なさそうに瑠翔に言う。
部活動を始める人たちの声が響き渡る中、瑠翔の髪が風になびいていた。
「いや、結愛が悪いわけじゃないから。それは俺のせいだから…」
瑠翔は下を向いて、右方向に顔を向けた。
「…いや、私が瑠翔が言えないような空気だしたからで…」
私も申し訳なさそうに瑠翔に言うと、私を抱きしめていた。
瑠翔のせいではないと思ったが…
私はモヤモヤした感情が残っていた。
「いいんだよ。俺が悪いんだから。結愛、俺はね離れていても結愛が傍にいるってだけで」
瑠翔が私を抱きしめたまま、声を発した。
玄関先の近くにあった隅に私たちはいたので、誰も見ているわけではなかった。
だけど、私は学校にいるということでスリルとハラハラが止まらなかった。
「……瑠翔」
「………」
私は瑠翔の名を呼ぶと、瑠翔は黙っていた。
「…私、瑠翔に言ってほしかった。一樹先輩から聞くなんて思いもしなかった」
私は瑠翔の胸に抱きしめられながら、本心を口にする。
「…その内、言おうと思っていたよ」
瑠翔は寂しそうにしていて、私から少し離れて、両肩を掴んで小さい声で言う。
「……うん、だけど…」
私をそう言って、瑠翔のことを目を逸らしてその場から立ち去って、学校をあとにした。
瑠翔は私を呼んでいたけど、自分の鞄をギュッと右手で持ち、早足で帰った。