けれどその時浮気したのが私とも仲の良かった後輩モデルだったので、笑えなくなっていった。
仕事も引退して琥太郎とも別れて一年の引きこもりを経て、私は北海道に逃げるようにやってきたのだ。
「柚葉とは別れちゃったんだ。 まあ、琥太郎だからね」
携帯を手に取り独り言は止まらない。
別れを告げた時はかなりしつこく引き止められた。 でももう無理だった。 今まで琥太郎の前でずっと無理をして笑ってきたんだ。けれどもう無理をしても笑えなくなるまで心は疲弊していた。
のえるさんと琥太郎はお似合いだと思う。 そういえば彼女も人気絶頂だった若い頃に一度結婚している。 そしてあっという間に離婚してまた華やかな業界に戻って来た。結局は華やかな舞台が似合う人なんだ。
私は違う。
私には華やかな業界は向いていなかった。
陰湿な闇も人間の汚さも受け入れられない弱い人間だ。 その証拠にゆったりと流れる今の生活に満足している。
北海道で動物達、そして利久さんと一緒に過ごす生活に小さな幸せを毎日感じている。 あの忙しかった日々には感じた事のなかった感情だ。
だから利久さんがたった一日いなくっても寂しく感じてしまう…。



