【完】セカンドマリッジライフ


「ん~……点滴に通いだして5年だ。 すごい事だと思うよ。
猫って自分が死ぬ時が分からないんだって。 よく猫は人に死に際を見せないって言うだろう?
あれも一人になってゆっくりと体力が回復しているのを待ってるんだって。 そう考えたら最後まで前向きだよな。
人間は自分の死に際つーのが何となく分かるもんだろう。 もがいたり苦しんだり色々と考えたりしちゃうけど、死ぬまで死ぬことを意識せずに死んでいくのもある意味幸せなのかなあって思う」


私は利久さんの獣医として真剣に向き合っている姿が好きだった。
そんな彼を尊敬していたし、誇らしくさえ思えた。
だけど近頃彼の事を考えて胸がドキドキしてしまうのは、それとは違うまた別の感情だ。



少しずつ愛しさが芽生えていく。
愛しくなってしまったら最後。 触れたいと思うし、触れられたいと思う。

もっともっと彼の深い所まで知って行きたい。 改めて思えば、こんな風に人を想うのは初めてだったのかもしれない。