【完】セカンドマリッジライフ


「別に無理して行く事もないがな…」

「えぇー?全然無理してないし、むしろ行きたいもん! それに利久さんと一緒に居たらそれだけで楽しいし!」

その彼女の言葉は意外だった。 俺と一緒に居たら楽しい…? こんな面白みも愛想もない男と一緒に居てか?

「利久さんってすっごく暖かい空気感を持っている人だから。 私が喋り過ぎちゃって絶対ウザいはずなのに、文句を言いながらもきちんと話を聞いてくれるんだもん。
そういうの、嬉しいし暖かい。 利久さんと一緒に居ると私癒されます」

いつもの甲高い声ではなかった。少しだけ落ち着いたトーンで、しかししっかりと人の目を見て言葉を噛みしめるように大切に口を開く。

そして彼女は真っ白の歯をむき出しにして、無邪気に笑うのだ。 そんな顔にドキドキしてしまうなんてどうかしている。

どうかしているというのならば、もうずっとどうかしていたのかもしれない。 どこの誰かも分からない人間を自宅に迎え入れて、互いの事を知りもしないのに籍までいれてしまうなんて。

もうずっと他人との関わり合いを避けて生きて来た。 でも心のどこかで寂しかった自分が居たのかもしれない。 寂しさを素直に口にする事の出来ない俺の心にスッと自然と入り込んできてしまうものだから、不思議な女性だ。