それなりの観光施設があるのは知っていた。 この街は北海道に移住する前何度か旅行で来た事があったからだ。
元来観光スポット的な物が苦手な自分は一人では余り来る機会はなかった。
それどころか、こういう場所には少しだけ苦い思い出。 人と一緒にいるというのは気を使う。
実は昨日携帯で観光スポットについて調べ直した。出来るだけ雪乃が楽しんでくれるようにとそんなプランを組んでいる自分は少しだけ可笑しかった。
「自然も綺麗な物もだ~い好き! さっきの牧場でも夏に乗馬するように予約してきたのッ」
彼女の明るさは周囲に気を使わせんばかりのものだと思っている。 もしかしたら俺に気を使ってくれているのかもしれない。
けれど雪乃の無垢な笑顔を見ているとそんな事を考えてる事自体馬鹿らしくなる。 俺自体が周りの目ばかり気にしている証拠だ。 憶病で小さな情けない男なのだと、懐の広い彼女を見ていると実感させられる。
珈琲の缶を両手で握りしめて、フッと小さなため息が漏れる。
何故だろう、彼女が横に居ると心が少しだけ軽くなる気がした。



