「不思議だわ。東京と同じ時間が流れているのに、北海道の方が時間がゆっくりに感じるのね」
美しい言葉だと思った。そしてそれには同感する。 ゆっくりとこちらを振り返った彼女は、目を細めて口を大きく開けて笑顔を見せた。
美しい人なのだと思う。
そしてこの三ヵ月彼女の人となりを見つめ続けて思う事がある。
美しいのは身にまとう姿かたちだけではなく、彼女の笑顔はどこか慈愛に満ちている。 そこには邪気一つ見当たらないのだ。
心の底から優しくていつだって笑顔を絶やさない。それを自然とやってのける事がこの世界の大半の人間が出来ない。
彼女が落ち込んでいたり不機嫌そうな感情を人にぶつける姿を未だに見た事がない。 見せないからといって無いわけじゃない。 いつも周りを不快にさせない態度を取り続けるのはある意味彼女の才能なのだ。
俺にはどうしたって出来ない生き方だから、やはり羨ましくもなる。



