【完】セカンドマリッジライフ


雪がすっかり溶けてしまった四月の北海道。 この辺はうちの動物病院がある街よりぐっと民家が減って行って、見渡す限り緑だ。

大きくうねる山道を上り下りするため、空が少しだけ近くなったような錯覚に陥る。

この辺りは富良野と隣接しており、春や夏になると観光客で溢れかえる。 最近じゃあインバウンドの外国人だらけだ。


俺も都会生まれで都会育ちだ。 だから初めてここに来た時はえらく感動したのを覚えている。

四季それぞれに色があるのならば北海道に敵う場所はないだろう。 春は緑で溢れ、夏は色とりどりの花で埋め尽くされる。 秋は紅葉に染まり、冬は真っ白の銀世界になる。

季節によって見え方の変わるこの場所が俺はお気に入りだった。 そして隣で笑う彼女にそれを見せたいと思う。 きっと彼女ならばいちいち大袈裟に感動して、俺の表現しきれない方法でこの美しさを誰かに伝える事が出来るのだろう。

「ただの緑ののどかな景色なのにどれだけ見ていたって飽きないのね」

彼女にしては珍しく落ち着いた口調で言った。 窓ガラスに手を充てているので、表情は見えない。