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「うわあー…空気が気持ち良い…!」
翌日雲一つない青空の真ん中で太陽が燦燦と輝いていた。 こんな日は、更に空が高く見える。
隣の助手席で武蔵を抱えて雪乃は車の窓を開けた。 まだ少しだけ肌寒いけれど、こんなに晴れ渡った日ならばパーカー一枚でも全然寒くない。
「猫たちも来れたら良かったのにね?」
「馬鹿言え。猫っつー生き物は憶病なんだ。車になんか乗ったらブルブル震えちまう」
「臆病者ー!利久さんと同じでちゅねー?武蔵」
「誰が臆病者だ」
雪乃に’臆病者’と言われて一瞬どきりとしてしまった。 冗談ですよぉーと彼女は笑っていたけれど、実際少し図星な部分があるのは否めない。
人間なんて信じない。信じられるのは自分と一心に愛情をくれる動物達だけ。
もう恋もせずに誰も愛さないと誓った。
誰かが言った。 誰も愛せないのは不幸者で、誰も愛さないのは臆病者だと。
事実俺はいつからか他人へと心を開くのを止めて、一定の距離を保って生きて来た。 誰かに期待をするのなんて無駄な事。 裏切られるのは痛いから、それならば初めから一人で居た方が楽だった。



