やつきめ。 予期せぬ報せ。 過去は振り返りたくない。




北海道に来て八ヵ月の時が過ぎた。あっという間だったと思う。

短い夏はあっという間に過ぎ去ってしまって秋がやって来る。 秋が来たと思えば冬が来るのはあっという間なのだと利久さんは言う。

私がこの地にやって来た時はまだ雪が降って来た。 まだ9月だというのに窓の外を見て雪が降るのを心待ちにしていた。

「ふあー…眠ぃ…。 雪乃おはよう。早いな…」

パジャマに身を包んだ利久さんの黒髪には寝ぐせが一つ。 黒縁眼鏡の奥に隠された瞳を眠そうに擦る。

利久さんが起きて来ると武蔵は嬉しそうに駆け寄って、ソファーの上で眠っていた猫達は耳をピクピクと動かす。

…なんて平和な一日の始まりだろう。 利久さんや家族である武蔵達を見ているだけで頬がだらしなく緩んでいく。

「ふふ。 朝ご飯出来てるよ」

既にダイニングテーブルに用意されていた朝ご飯を見て利久さんは感心しながらも椅子に座る。

「おお、すげぇ。 和食って感じだな。 朝からこんなご馳走が食べれるなんて嬉しい」

「ひゃはー!もぉ利久さんったらあ、こんな料理上手な奥さんが居て嬉しいなんて。えへへ~照れちゃう!」