粗方の予想は当たっていた。 白血球の数値が普通の猫より少ない事。しかし稀に白血球が異常に少ない猫は居る。 それは余り気にしなくてもいい。白血球の形に異常がある方が問題がある。しかし詳しく調べて見たら形には異常がなかった。
しかし大学病院の獣医いわく肝臓の数値が高い方が心配との事。 それは俺も常々感じていた。
ステロイドを処方しないといけない難病かもしれない可能性が高まった。 しかしお腹を切り肝臓の組織検査をしないと詳しくは分からない。
一週間後、イチの手術が決まる。 急遽みどり動物病院を休診して、その日はイチの手術をする為に大学病院まで向かう事になった。 雪乃はすっかりと元気を失くしてしまった。
そしてイチの手術前日の夜。
あれからイチの調子は悪くはなさそうだ。 うちに武蔵の次にやって来た子猫。 加賀美家ではボス猫で、けれど小さい時は未熟児でいつ死んでもおかしくない状態だった。
生まれつき心臓の形が普通の猫とは違って、けれどそんなの忘れさせるくらい大きく元気に育った。 俺は、命に限りがある事を普通の人よりかは知っている。
獣医として色々な動物と向き合ってきて、この仕事が出会いと別れの連続である事は誰より身に染みている。



