「利久さん、イチ…イチ死んじゃうの…?」
「大丈夫。イチは死なない。 大学病院の方へ連絡を取って見て、明日にでも病院に行こう。ここでは出来る事が限られる」
「ふぇ…うぇ…嫌だよー…イチが死んじゃったら嫌だあー…利久さん助けてー………ふぇーーー…」
「大丈夫。大丈夫だよ、雪乃……」
いつまでも泣きじゃくっている雪乃を抱きしめた。 いつだって笑っていて欲しいんだ。 それが俺の原動力になる。
悲しい顔を君にさせたくない。 君を愛していると意識した時から誓った事だ。
すぐに知り合いの獣医に連絡をして翌日酪農大学動物医療センターへ向かった。
互いに気まずさは忘れてしまっていた。 それよりもイチの体調の方が心配だった。 今日動物病院の休みを取っていて良かった。
しかし病院に着くまで雪乃の顔から一切の笑顔が消えた。 片時も猫キャリーに入ったイチを離さなかった。



