「きゃーーー!!利久さ、利久さん!!!」
慌ててリビングへ行くと、雪乃は大きな瞳から大粒の涙を零して泣いていた。
その腕の中にはイチが包まっていて、ぜぇぜぇと苦しそうに呼吸していた。
「りく…利久さ……イチが!イチが!」
ずっと前からこんな症状が出る事がたまにあった猫のイチ。 その日、改めて血液検査をすると明らかに白血球の数値が異常だった。
少なすぎる。 それに伴い肝臓の数値も悪かった。
適切な処置のお陰で発作のようなものはすぐに収まったけれど、検査結果を見て頭を悩ませる。
雪乃と喧嘩をしていたのさえすっかり忘れて、彼女は大泣きのままイチの背中をさすっていた。
検査結果を踏まえ、俺はとある肝臓の病気を疑った。肝臓が少しだけ固い。 しかし治療をするにも病気の証明が必要だ。何でもなかったとしたら下手に強い薬を投与する事が出来ない。
そして病気を証明する為にはお腹を開き、肝臓の中身を見て見るしかない。
しかしみどり動物病院では手術の環境が整っておらず、イチが手術をするのならば大きな大学病院へ行かなくてはいけない。



