「のえるさんって楽しい人…」
「そうかあ?すっごく迷惑な人なだけだと思うけど」
帰りの車内の中、やはり雪乃の様子はおかしかった。 一見普通に会話をしているようにも思えるのだが、彼女の視線は俺とは反対方向ばかり向いている。
まだ互いによく知らなかった頃に感じた距離感だ。
「のえるさんと一緒に居る利久さんも楽しそうだった…」
だからそんな言葉を口にしたのは意外だった。 俺とのえるが一緒に居て楽しそうだった…?どこがだ…?
「利久さんってあんまり感情表現が豊かな人じゃないけど、のえるさんの前だと表情もコロコロと変わって…
何か二人がすごくお似合いに見えた。」
「はぁ?!一体何を言ってるんだ?! そんな訳ねぇだろ…!俺達は性格の不一致で別れたんだ。
それにあいつの我儘に振り回されたら誰だって表情はコロコロと動くものだ。 それをお似合いと結びつけるのは納得が出来ないんだが?」
一切俺の方を向こうとしない雪乃へと段々と苛立ちが募って行く。



