「のえるさん、あっちに涼しそうなカフェがありましたよ?」
「本当?!じゃ休もう!お腹もぺっこぺこだし!
利久ー!行くよー!!!」
結局一日いっぱい俺と雪乃はのえるに振り回される羽目になる。
ホテルまで送って行ったらドッと疲れがたまった。 しかしのえるは能天気なもので俺と雪乃へお礼を言って、明日の空港への見送りは断られた。
こそりと俺へと耳打ちして「お似合いな夫婦。どうか末永く幸せにね」と軽口を叩いてきた。
確かに好きな人だった。 結婚したいと本気で思うまでには――。
離婚してからも未練たらたらで片方になった結婚指輪も、写真も捨てる事が出来なかった。
もう誰とも結婚する事はないと思っていた。 しかしそんな想いさえも思い出に出来たのは、雪乃が突然俺の前に現れたからだ。 突然現れて、あっという間に俺の心を奪い去っていたからだ。
もう彼女の笑顔が横にない生活は考えられない。



