雪乃の手前のえるとは余り喧嘩はしたくなかった。 けれど身勝手なのえるに怒りは爆発寸前だった。
「利久さん、私自販機に行ってミルクティー買って来るよ。 利久さんは珈琲でいい?
のえるさん、あっちにベンチがあるから休んでいて下さい。 じゃ、私行ってきます…!」
「ゆ、雪乃!そんなの俺が…!」
雪乃は雪乃で気を使いまくりだ。どうにもこうにも何故同じ都会育ちで、同じような業種の仕事をしていたというのにここまで性格が違うのだ。
着飾ったのえるに対し、今日の雪乃もスッピンに近いメイクでティシャツにスキニーといったラフな格好をしていた。
それでも不思議だ。 何故君ばかりがこんなにも美しく見えるのか。
のえるには言いたい事は山ほどあった。 が、ベンチに座り武蔵を抱き上げた彼女は息をめいっぱい吸っては吐いて穏やかな表情を見せる。
確かにいつも以上にカッカッとしすぎていた部分はあった。 のえるが雪乃に変な事を言わないかハラハラして心の余裕は失くしていた。



