ななつきめ。② 君の笑顔に救われた。 利久SIDE




雪乃の様子がおかしい。 昨日のえるが勝手に北海道にやって来たから当然といえば当然だ。 雪乃は俺の前の奥さんがのえるだって知らなかったのだから。

勝手に来て身勝手な行動ばかり取るのえるに混乱したに違いない。  雪乃がモデル業界で活躍していた人間ならば、のえるの事を知っていて当然だ。 どこから話せばいいのだろうか。

「利久さん、おはよッ! 昨日は疲れちゃってたのかなあ~?ベッドに入ったらすっかり朝まで寝ちゃってたよ~」

努めていつものように明るいふり。 けれどこの時の俺は雪乃が本当に楽しくて笑っているのか、無理をして笑っているのかはその顔を見ればすぐに分かった。

「ああ…何か色々とごめん。 」

「何がよぉ~? びっくりしちゃった、利久さんの前の奥さんがまさかのえるさんだったなんて…!
武蔵ってのえるさんが飼っていた犬だったんだね。 武蔵ものえるさんに会えて嬉しそうだったじゃない。
今日はのえるさんを観光に連れて行くんでしょう? せっかく北海道に来てくれたんだから……」