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こんな偶然がまさかあるのだろうか。
利久さんがぽつりと前の奥さんの話をしてくれた事はある。 けれどその素性を詳しく詮索するような真似はしなかった。
本当はどんな人が気になって仕方がなかったけれど、前の奥さんを気にするような小さな人間だとは思われたくない。 だからってまさかこんな形で知る事になるなんて。
そしてこんな形で利久さんが私の正体を知る事になるのも…。
「びっくりしたあ…!どこかで見た事のある顔だと思っていたけれど…
まさか利久の新しい奥さんが秋月雪乃ちゃんだったなんて。
利久ったら本当に芸能界の事に興味がないのね。 雪乃ちゃんってすっごく人気のモデルさんだったのよ?
うわあーびっくり。現役の頃は話をした事はなかったわよね?でも雪乃ちゃんの事はよく知ってるわ」
話をし出すと止まらない人のようだ。 言い訳をする事さえ許されず利久さん自身が今起こっている自体をよく分かっていないようだ。



