【完】セカンドマリッジライフ


「…利久さん?」

入り口に座り込んでいた女性が立ち上がり、こちらへ走り出す。 近くで見れば見る程目が覚めるような真っピンクの髪色だ。 くわえて着ている洋服も奇抜で、顔を上げたら大きな声を上げて運転席の窓を両手でバンバンと叩く。

「あ!」

思わず声を上げてしまったのはその顔に見覚えがあったからだ。
どうしてここに?!何故彼女がこんな田舎の動物病院に居るの?!

話した事はなかったけれど存在は昔から知っていた。 それに先月ネットニュースで彼女の存在を見てしまったばかりだ。


神山 のえる。 現在琥太郎と付き合っていると噂になっていたカリスマモデル。 利久さんが観念したように扉を開けると、彼女は弾けんばかりの笑顔を彼へと向けて「利久!」と名前を叫んだ。

嫌な予感がした。