「…イチは元々未熟児で生まれて心臓の形が小さな頃からおかしかったんだよな。 君に言っても分からないと思うが、レモン型というか…普通とはちょっと違っていた。
だからうちで引き取ったようなものだ。 大きくなってからは元気に飛び回っていたから心臓には問題がないと思ったのだが
今度またそんな症状が出るようならば血液検査でもしてみるか…。 まあ、思い過ごしならばいいのだが」
「大丈夫だといいよねー……」
イチは猫の中でも私に一番懐いていた。 出かけていたら必ず一番に出迎えてくれるし、お風呂に入っていると扉の前で寝っ転がって待っていてくれている。
今もソファーで武蔵と私を囲んで丸くなっている。 こうやって見ている分には元気には見えるんだけれど…。
そんな八月下旬。 少しの不安を残して日々は穏やかに過ぎ去っていくように思えた。



