いつつきめ。 愛しさは無限大。 幸せな毎日。




六月。 蝶は花の上を気持ちよさそうに舞い緑は息吹き柔らかな風が通り過ぎていった。 家の裏手にある花壇には毎年利久さんが花を植えて大切に育てているようで、いくつかの花が蕾をつけて風に吹かれている。

動物病院が始まる一時間前に利久さんと一緒に武蔵の散歩をするのがいつしか日課になっていた。

「あらあ、利久先生雪乃ちゃんおはようございます。 今日も仲良しねぇ。」

近所の人に話しを掛けられると、反射的に利久さんは繋いでいた右手を離した。

眼鏡の奥にある瞳が恥じらっているのを知っている。 利久さんの顔を見上げて再びぎゅっと手を握り締める。

「おはようございまあす! はい、今日も仲良しです!」

「うふふ~若いっていいわねぇ~。素敵だわ~」

愛想笑いで頭を下げる利久さんの横で私はにこにこ笑っていた。

「もぉー…利久さん…どうして人が居ると手を離すの? 寂しいじゃない!」

「そんなの照れくさいだろう…。まるで周りに仲が良いのを見せつけてるみたいで…。
そんなバカップルみたいな事はしたくない…」