涙が溢れないように耐える賢心は、
重なっていた手を強く握りしめるけど、
小さく震えているのが分かる。

きっと泣き虫賢心が出てこないように
頑張っているんだろう…


「…俺が、陸上部に誘ったから………
雪乃が体調悪そうだった事も何となく気付いてたのに、あの時俺が止めなかったから…」

「えっ?そんな風に思ってたの?……フフフ」

「な…なんで笑うんだょ!だってそうだろ!?」

「違うよ。あの時私が陸上部に入ったのは、
ずっと一緒にいたかったから。
部活の練習も帰り道も、ずっと賢心にくっついていられると思って……」

「でも、無理して病気が悪化したのは俺の…」

「それも違う!実は…最後の大会の前にね、
お父さんが言ってたの。私が頑張って上位に入賞したらお父さんも手術頑張れそうだなって……」

「…もしかして、お父さんも?」

「うん。ちょうど心臓の手術する前だったの。
だから無理してでも頑張りたくて……
でもそのせいでお父さん、泣いて謝ってた…」

賢心の涙が私に移り、枕に流れ落ちる前にそっと拭ってくれるその手をぎゅっと握り返した。

「だからお願い、今回の入院の事もお父さんや
お母さんには言わないで!」

「雪乃……」