「ごめん……やっぱ、無理」

診察室を出て行こうとした私を賢心は咄嗟に
捕まえて、涼くんがなだめる。

「畑中、落ち着いて。検査は後でもいいから」

ドアノブにしがみつき、涙は止まらない。

「こんなはずじゃ、なかったのに…」

涼くんは賢心にアイコンタクトを送り
診察室を出て2人きりにさせると、
賢心はゆっくり私を誘導して椅子に座らせた。


「ごめんね雪乃……ちゃんと話さなかった俺が悪いんだ。ただただ不安にさせて、本当ごめん」

「なんとなく、気付いてたよ…。私を守る為に
医者になったとか言うから……もしかしてって…」

「けどそれは本当だよ。実は、中学の頃に雪乃が入院した時から知ってたんだ」

「ぇ‥!?そんな前から…嘘でしょ…」

「雪乃が秘密にしてたから俺も気付いてないフリしてたけど、向こうにいる間もずっと経過は診てたんだ。でももう、黙ってるわけにはいかない」

「‥……私の事、ずっと患者だと思ってたの?」

「そうじゃない。大切な人だから守りたいって
思ってるんだよ」

「私も思ってたの……賢心の事、守るって」

「俺達もう大人になったんだろ?
小さい頃に沢山守ってもらったんだから、
今度は俺が雪乃を守らせてくれるよな?」

ようやく涙が落ち着き、私は賢心の問いかけに
小さく頷いた。