触れた唇がゆっくり離れて、照れる私を抱きしめながら何故か自信たっぷり。


「やっぱり俺の事好きなんだな」

「キスで分かるの?」

「全部分かるよ」

「……全部…?」

「そう。今、俺とベッドに入りたいって思っ…」

「思ってない!」

「あれ?おかしいなぁ」

「私、そろそろ戻るね…」

「えー!もう少しだけ!!」

「ぁ…ちょっと!」


ひょいっと軽々体を抱き上げ、ベッドへ行くのを我慢した賢心はソファに座りしばらく私を離さなかった。


もう離れるのは無理

だって、大好きなんだもん

だから怖いんだよ……


自分の部屋に戻ってすぐ薬を飲んで、
遅い時間に迷惑だと分かっていたけれど
私は実家に電話をかけた。

「もしもし、お母さん…」

「どうしたのこんな時間に!何かあった?」

「ううん。この前、急に帰ってごめんね…」

「ふふっ、賢心がそばに付いてるからお父さんもお母さんも心配してないわよ」

「そういえば、お母さんでしょ!?
賢心に私の住んでるマンション教えたの!」

「そうよ。1ヶ月くらい前だったかしら。
雪乃がいる病院に行くことになって、どうせなら
近くにいたいから教えてほしいって」

「1ヶ月くらい前?…」


涼くんに病状があまり良くないと言われたのが、
ちょうど1ヶ月くらい前だった…


「お母さん‥……お父さん、まだ起きてる?」

「起きてるわよ。ちょっと待ってね」

「もしもし雪乃?どうした?」

「お父さん、この間…」

「賢心と喧嘩してないか?雪乃の事、大事に思ってるんだから、仲良くするんだぞ」

「‥……うん。お父さん、体無理しないように。
お酒もほどほどにして、ちゃんと薬飲んでね」

「それは雪乃も一緒だろ。同じ病気なんだから」

「そうだね…遅くにごめんね。おやすみなさい」

「おやすみ、雪乃」