「お母さん……賢心には絶対言わないで。きっと
心配して聞いてくるけど、風邪って言ってね…」

「…分かったよ……」


この時ようやく詳しい検査をした私は、
肥大型心筋症だと診断され、今まで体調不良を
隠しながら運動していた事をたんまり怒られた。

「これからは激しい運動は禁止。薬を飲みながら定期的に検査をしてみていくけど、また無理したら最悪の場合突然死を起こす事もあるからね!」

と主治医に脅されると死ぬかもしれない恐怖より
賢心を守る事が出来ない自分の弱さが情けなくて
泣いたのを覚えている。


「母さん、雪乃いつ退院するの?お見舞いも
行ったらダメって、そんなに悪いの?」

「風邪を拗らせてるって聞いたわよ……
移ったら困るから、面会出来ないのかもね…」

「そっか……」

2人がこんなに会わなかった日々は今まで
1度もなく、不安でたまらなかった賢心は、
更にショックを受ける事実を偶然聞いてしまう。


「心筋症!?雪乃ちゃん、大丈夫なの!?」

「今まで部活も無理してやってたみたいで、
そのせいで病気も進行してしまってたの……
私が気付いてやれなかったから…」

「そんな…自分の事責めちゃダメよ!
あんなに元気そうに走ってたんだから、気付くのは難しかったのよ…」

母親と雪乃の母親が話していた。

心筋症?病気?進行?
…部活のせい‥……いや、俺のせいだ。
陸上部に誘った俺が……
最近様子がおかしいって思ってたのに
ちゃんと気付いて止めなかったから…