「知ってるんでしょ、わたしの過去のこと。自分を許しちゃだめなの」
「過去のお前は知らない。知ってるのは今のお前だけだ」
葉山くんがわたしの肩をつかんで、顔を覗き込んだ。
まっすぐとわたしの目を見る。
(俺は……お前のことが……)
溢れるように聞こえた葉山くんの心の声。
「離して……もうすぐおばあちゃん帰ってきちゃうから」
それだけ言うのが精一杯だった。
(そんなの嘘だろ。おばあちゃん夜まで帰ってこないくせに)
嘘はすぐバレてたけど、
「ごめん、なさい」
「ちょっと待て。俺は、お前のことが」
葉山くんの胸を力一杯押して玄関から追い出すと、ドアを閉めた。
葉山くんのことが好きで好きで、気持ちを抑えるのがつらい。
わたしは耳をふさいでしゃがみこんだ。
どれだけそうしていたか分からない。
次々に涙が溢れて止まらなかった。