「離して、葉山くん。こんなの悪いから」
「……」
慌てふためくわたしの声が傘に叩きつける雨の音で聞こえないのか無視しているのか。
絶対後者だと思うけど、葉山くんは立ち止まってくれない。
おばあちゃんの家までは歩いて15分。
こうなったら……早く帰るしかない。
観念して葉山くんと並んで歩く。
どうしよう、体が熱い。
葉山くんはわたしを胸にすっぽり抱いて離さない。
心臓が飛び出そう。
「葉山くん。恥ずかしいから、この手だけ離してくれない……?」
トンとわたしの肩を抱く葉山くんの手に軽く触れると、葉山くんはハッとした様子で肩から手を離した。
「悪ぃ」
(俺はお前が……)
こっそり葉山くんの横顔を見上げたら、チラリと葉山くんもわたしを見た。
葉山くんはすぐ目をそらして、そっぽを向いてしまった。
少しだけ葉山くんの顔が赤かった気がする。
「……」
「……」
俺はお前が……ってなんだったんだろう……?
思い返してみたら、いつもじっとわたしを見ている葉山くん。
目をそらすのはいつもわたしの方で、葉山くんからそらすのは珍しい。

