それから、わたしの学校生活は平凡に過ぎていった。
うさまるたちがいなくなって数日後、わたしは考えて考え抜いた決意を胸に昇平くんを体育館裏に呼び出した。
このまま甘え続けちゃだめだ。
体育館裏にやってきた昇平くんは何かを感じ取っているみたいに真剣な顔をしていた。
「話ってなに?」
(好きだよ、澪ちゃん……)
昇平くんから溢れる心の声に、いつものように目をそらしそうになった。
だけど昇平くんの気持ちに答えることはできないからこそ、目をそらしてはいけないんだ。
自分の気持ちに向き合って初めて気づいたこと。
わたしはまっすぐ昇平くんを見つめた。
(どうしようもなく、大好きだ)
「ありがとう、昇平くん」
わたしは深く頭を下げた。
わたしが泣いちゃだめなのに、泣きそう。
「なになに、改まって」
(これで終わりか……)
昇平くんは冗談っぽく笑うけど、無理に笑って目にうっすら涙が光った。
「昇平くんはわたしの初恋で……今でも大切な存在だよ。でも、ごめんなさい。わたし……葉山くんが好きなの。無口で無愛想な人なのに」
なのに、心の中は優しくて。
誰よりも優しくて、一緒にいたいと願ってしまう。
わたしは葉山くんがどうしても。
好きだ。
「……俺の方こそ、ありがとう。一緒にいられて幸せだった。澪ちゃんが葉山くんと幸せになることが俺の一番望むことだよ。澪ちゃんは十分苦しんだよ。自分のこと許してあげて」
(どうか、幸せになってね。澪ちゃん……)
「昇平くんが一緒にいてくれて、本当に救われたよ。ありがとう」
そしてわたしは、昇平くんに背を向けた。
ごめんなさい、昇平くん。
わたしは自分の気持ちにしっかり向き合って決めたんだ。
葉山くんのこと好き。
大好きだけど、やっぱり過去の自分は許せないから。
幸せになってはいけないと思うから。
葉山くんに気持ちは伝えない。
もう関わらないって決意したんだ。