心の声は聞きたくない!


(自分の気持ちから逃げることこそ、今までに傷つけた人に対して失礼では?)

(澪、自分の気持ちに正直になってね)

さっきのウサギたちの声が思い出された。

ハッとして昇平くんを見ると、

(やっぱり、葉山くんのこと好きなんだな……)

昇平くんの心も泣いていた。

わたしが自分の気持ちから逃げているせいで、傷つけてしまってる。

好きって言葉に出さない昇平くんの優しさに甘えて傷つけるのは、わたしが過去にしてきたことと同じだ。

わたし、昇平くんには自分の気持ちを伝えるべきだ……

「昇平くん、わたし……」

ブロロロ……

意を決したわたしの声は、裏門から入ってきた車の音にかき消されてしまった。

ウサギたちを迎えにきた動物園の車だ。

「俺がいたらウサギたち出てこないか」

昇平くんは、じゃあなと片手をあげてウサギ小屋を出ていった。

今伝えるべきだったのにタイミングを逃した……