心の声は聞きたくない!


話が早く進んだようで、朝のホームルームで担任の先生がウサギたちは今日の昼休みには動物園に引き取られることが決まったと話した。

犯人は調査中だけど、まだ分からないらしい。

あんなひどいことした人を、わたしは許せない。


「みんな、わたしの友達になってくれてありがとう。怖い人から守ってあげられなくてごめんね。怖い思いさせてごめんね。動物園に会いに行くから。これからも友達でいてね」

昼休み、お昼ごはんも食べずにウサギ小屋にやってきた。

みんなと少しでも長く話していたい。

(こちらこそ、澪と友達になれてうれしかった!)

(動物園はとても楽しいところだとのうわさ。これを機に行けるとは、むしろ楽しみですね)

うさまるとハカセからは、わくわくした気持ちが伝わってくる。

元気そうでよかった。

(ただ、ひとつ心残りが。澪と葉山さんの恋の行方を見届けたかったです)

はぁ、とユキちゃんが小さくため息をついた。

「なに、恋の行方って! 恋なんてしてないよ。それに、わたし過去にいろんな人傷つけちゃって。恋なんてする資格ないんだ」

(ん? 資格ないって誰が決めたんです?)

ユキちゃんがクリクリの目でわたしを見上げた。

(自分の気持ちから逃げることこそ、今までに傷つけた人に対して失礼では?)

ハカセが諭すように、わたしの手に小さな手を重ねた。

(澪、自分の気持ちに正直になってね)

うさまるもわたしの手に頬擦りをしてくれた。

そのとき、小屋の外で聞こえたジャリッジャリッと乱暴に歩く足音に、ウサギたちが耳をたてた。

(この足音、昨日の夜の)

ウサギたちは一瞬でほら穴に逃げ込み、その姿は本気で身の危険を感じていた。

昨日の夜のって……犯人!?

「あんたって、ほんとしぶといね」

わたしが振り向くと立っていたのは、にらみを利かせた姫島さんだった。