心の声は聞きたくない!


先生は唇をかみしめ、

「葉山、すまなかった」

悔しそうに謝った。

それから紙パックジュースのゴミは片づけたけどペンキをきれいに落とすことは難しくて、学校から業者に頼むと先生が約束してくれた。

だけど、

「ここの掃除は毎日、あなたたち2人だけで行っていたというのは本当ですか?」

遅れてやってきた校長先生が険しい顔でおっしゃった。

「申し訳ございません」

頭を下げる先生を校長先生は手で制した。

「生徒たちが皆、優しい気持ちで接してくれたらと思ってウサギを飼育することに決めたのに残念です。今、動物園に連絡をして引き取ってもらうことになりましたから」

優しい口調で話す校長先生の前に、わたしは慌てて進み出た。

「待って下さいっ。わたしたち、いやいやお世話してたわけじゃありません。それに途中で投げ出すなんて嫌です」

「そうだね、途中で投げ出すなど教育現場としてあってはなりません。ただ……こういうことが起きてしまうと……分かってください」

校長先生も目を伏せて残念そうにするから、校長先生を責めたって仕方ないって分かってる。

だけど……

「分かりました、俺もその方がいいと思います」

葉山くんがわたしと校長先生の間に割って入って、あっさり話をつけてしまった。

ほっとした様子の校長先生と、ペコペコ頭を下げながら歩き去る先生を追いかけたいのに、葉山くんに腕をつかまれて出来なかった。