「先生、見ててください。葉山くん、ウサギ小屋に入ろう」
「いや、でも」
「大丈夫」
わたしはためらう葉山くんの手を取って笑顔を向けた。
そっとうさぎ小屋に入って、
「みんな、聞いてたでしょ? 葉山くん、やってもいないのに疑われて。ずーっと前にも大声で意地悪言ってきた人いたの覚えてない? その人たちからも守ってくれたの葉山くんなんだって。毎日お世話してくれてる葉山くんのこと、もうオオカミだなんて思ってないんでしょ?」
葉山くんと並んでしゃがみ、ウサギたちが出てくるのを待ったらピョコンとほら穴から白い耳と白黒の耳が見えた。
(もちろん、葉山さん大好きです)
(まぁ、オオカミじゃないかもなとは薄々感じてはいたけどね)
ユキちゃんとハカセが葉山くんにすり寄ってきてくれた。
「お、おお……」
葉山くんは戸惑いを隠せないでいるけど、目を細め顔はほころんでいる。
「うさまるー?」
わたしがうさまるが隠れたほら穴にささやいたら、
(はやまっ! 今までごめんっ)
うさまるが飛び出してきて葉山くんの腕の中に入り込もうと、もがいている。
葉山くんがおずおずと抱っこすると、うさまるは満足げに落ち着いた。
うさまる、何で名字で呼び捨て……!?
そうか、下の名前知らないんだ。
って、そんなことは今いいから!
微笑ましい光景に本来の目的を忘れそうになっていたわたしは、ハッと気を取り直した。
「先生、ウサギが警戒心が強いのは理科の先生だから当然ご存知ですよね? しかも犯人なら、なおさら怖がるはずです。葉山くんは毎日世話をして、むしろウサギたちに好かれてます。犯人じゃないのは一目瞭然ですよね」

