「ウサギたち怖がってるみたいなんだ。みんな教室戻ってくんないかな」
小屋の外で葉山くんが野次馬に声をかけているのが聞こえた。
「えー」
「なんで葉山くんがそんなこと言うの?」
口々にあがる不満に、
「頼む」
葉山くんは深く頭を下げて、たくさんの野次馬一人一人に頼むように何度も頭を下げた。
本当に、あなたは優しい人だ……
しぶしぶ野次馬が帰りはじめ、静かになってきた。
「みんな、もう大丈夫だよ。ここにはわたししかいないよ」
優しく声をかけたら、ほら穴からそっと、うさまるの茶色い耳が見えた。
「うさまる? おいで」
(みーおーー!)
勢いよくうさまるが胸に飛び込んできた。
(すごくすごく怖かったです)
(あなたが来てくれてやっと安心できました)
ユキちゃんとハカセもうさまるに続いた。
「みんな、怖かったよね。よしよし」
(昨日の夜……金網を何度もガタガタ揺らされて。大きな笑い声も怖くて。ぼくたち震えてました)
ハカセが教えてくれる。
思い出したのか小さく震えてかわいそうで、見ていてつらくなるほどだ。
こんな小さな体で逃げ場のないこの小屋で、どれだけ怖かったことか。