「なに、これ」

人だかりをかき分けて前に進み出ると、小屋の金網に赤いペンキで描かれた大きなバツ印が目に飛び込んできた。

そして小屋の前に紙パックジュースのゴミが散乱している。

投げ捨てられた大きなゴミ箱は、たぶん食堂前の自販機横のものだ。

飲みかけも混じっていたのか、甘ったるいようなムッとする臭いが鼻をかすめる。

「鍵かけてたから小屋の中は大丈夫そうなんだけど、声かけてもウサギたち出てこねぇんだ。無事か確かめらんなくて心配で。俺じゃだめだ、お前じゃなきゃ」

「みんなっ」

異様な光景に立ち尽くしていたわたしは、葉山くんに背中を押されて我に返った。

「うさまる、ユキちゃん? ハカセ?」

静かにみんなを呼ぶけど、出てこない。

野次馬の声が騒がしいし、怖くて出てこられないのかもしれない。