この日、学校につくといつもより騒がしい気がした。
「やばいよね」
「ちょっと見に行ってみよ」
みんなが口々に言いながら走っていく。
何かあったらしいけど、わたしには関係のないことだろう。
人の流れに逆らって自分の教室に向かおうとしたとき、ガシッと後ろから腕をつかまれた。
「わっ」
驚いて振り向くと、眉間にシワを寄せて恐い顔をした葉山くんがいた。
「悪ぃ……」
葉山くんはパッとわたしの腕を離した。
どんな顔をすればいいか分からない。
この前ひどいこと言っちゃって、きっと嫌われてしまった。
もう話しかけられることはないと思っていた。
だけど、葉山くんの様子がおかしい。
相当急いで走ってきたのか息を切らして苦しそうで、
「ハァ、ハァ……早く……大変なんだ」
(うさまるたちが……)
膝に手をついて話す葉山くんに、どこかただならぬ空気を感じた。
「うさまるたちに何かあったの!?」
「一緒に来てくれ」
葉山くんがわたしの手をとって走りだし、ウサギ小屋まで連れてこられた。