(あの転校生、見かけによらず遊び人なんだ)
(葉山くんと遠矢くん、イケメンツートップ狙うなんて身の程知らず)
カラオケ以来、わたしのうわさはあっという間に広まって前の学校の状況と大差なくなってしまった。
たぶん、わたしがカラオケから帰ったあとその話題で持ちきりになったのだろう。
休み時間、教室の隅で机に突っ伏している葉山くんにチラリと目をやる。
知られてしまったかな。
ますますわたしはうつむいて、一日中下を向いて過ごすことも珍しくない。
「今、葉山くんのこと見てたよね?」
頭上で聞こえた声に顔をあげると、姫島さんがわたしを見下ろしていた。
違うクラスなのに、わざわざわたしのこと見張ってたのかもしれない。
わたしは黙って首を振ったけど、姫島さんはパッと手をのばしてわたしのメガネを取った。
「か、返して……」
「メガネ取ってもダサいのに変わりないじゃない。こんなんで前の学校でぶりっ子してたってわけ?」
(みんなの前で笑ってやる)
悪意のある心の声。
吹き出して笑う姫島さんに触発されて、教室のみんながクスクス笑った。
(あの顔でありえない)
(ぷぷ、恥ずかしい人)
言われなくても分かってる。
こんなわたしが調子のって、恥ずかしいほど愚かだったって。
分かってるから、もうやめて。
わたしは膝の上で握りしめたこぶしをただ見つめた。

