昇平くんを振りきるように歩きだしたわたしは、そばにある本屋から出てきた人とぶつかってしまった。
「す、すみません……」
急いで頭を下げたわたしの頭上で、
「大丈夫、澪ちゃん」
肩を支えてくれた昇平くんの声と、
「お前」
低くつぶやく葉山くんの声が聞こえた。
思わず顔をあげたら、そこには冷めた目の葉山くんがいた。
葉山くんの手には、ウサギの飼育と書かれた本が抱えられている。
勉強しようと本買ったんだ。
どうしよう、葉山くんに合わせる顔がない。
(チッ、用事ってデートかよ。お前もそういうやつだったか)
「ちが……ぅ」
否定の言葉を飲み込んだ。
頭がごちゃごちゃして、整理がつかない。
わたしは逃げるように走り去ることしかできなかった。
「澪ちゃん!」
昇平くんの呼び止める声だけが耳に届いた。
むしろこれでよかったんだ。
葉山くんに嫌われた方がいいんだ。
頭ではそう思っても、視界がにじんで心が悲しみに沈んだ。

