昇平くんが引っ越す日、寂しくて大泣きするわたしの頭に昇平くんは今みたいに手をのせた。
「そんなに泣かないで。手紙書いたんだ。あとで読んで」
昇平くんを乗せた車が見えなくなるまで手をふって涙が枯れた頃、わたしは手紙を開いた。
『ぼく、まじめで思いやりのある
みおちゃんが好きでした』
嬉しさよりも胸の痛みが勝った。
枯れたはずの涙がまたあふれて、どうしようもなく寂しかった。
本当はわたしも好きって言いたかった。
でもお母さんに聞けば昇平くんの新しい住所は分かったはずだけど、気持ちを伝える勇気がでないまま月日が経って、初恋の思い出は心の奥に仕舞われた。
昇平くんは手紙のこと覚えてるかな。
わたし、どうしたらいいの。
まさか、再会できるなんて思ってなかった。
葉山くんを好きな自分が許せないこんな日に。
トクンと初恋の相手に胸が高鳴るなんて余計に。
自分が許せなくて、わたしは深くうつむいた。