とぼとぼと重い足どりで正門を出たとき、
「澪ちゃん?」
名前を呼ばれて辺りを見渡すと、正門の脇で数人で集まって話していたうちの一人がわたしに駆け寄ってきた。
「澪ちゃんだよね? 俺だよ俺。覚えてない?」
「え……昇平くん!?」
声の主を見てわたしは目を見開いた。
「久しぶりだね、澪ちゃん」
(うわぁー! 変わってないな。嬉しいなぁ)
覚えてないはずがない。小学生のとき近所に住んでたわたしの初恋の相手、遠矢 昇平。
優しくていつも笑ってて、勉強もスポーツもできるクラスの人気者だった。
少し日に焼けた肌に爽やかな笑顔があの頃と同じ。
背はスラッと高くなって声がわたしの記憶より低くなってること以外、昇平くんも変わってない。
よく一緒に遊んでた。そして、わたしが男子にからかわれてたりすると必ず助けてくれて。
でも小学3年生のとき親の仕事の都合で他県に引っ越してしまって、それ以来一度も会えていなかった。
「俺中学でまたこっち戻ってきたんだ。でもまさか同じ学校だったなんて。知らなかったな」
昇平くんはまぶしいほどの笑顔を向ける。
「1ヶ月前に転校してきたばっかだから……」
「中3で転校してきた人って澪ちゃんだったんだ? 元気にしてた?」
昇平くんがわたしの頭にポンと手をのせた。