こわかった。
前の学校でみんなから敵意のこもった陰口を言われていた気持ちがぶり返す。
心がつぶれてしまいそう。
どうしよう。
放課後、もうウサギ小屋に行けない。
葉山くんとの唯一の時間。
いつのまにか、わたしにとって穏やかな大切な時間になってた。
だけどバチが当たったんだ。
こんなわたしが穏やかな学校生活を送ろうなんて、姫島さんの言うとおり図々しい。
『放課後、用事があるのでしばらくウサギ小屋に行けなくなりました』
放課後になって、教室を出ていこうとする葉山くんにノートの切れ端にそれだけ書いて渡した。
「そうか」
片手で受け取ってチラリと紙に目をやっただけの葉山くん。
その後は振り返ることなく歩き去ってしまった後ろ姿が廊下の角を曲がる。
うさまるたちに明日の昼休み会いに行こう。
みんなの好物の野菜を持っていって、それから掃除できなくなったことを謝らなくちゃ。
あとは、ブラッシングもしてあげよう。
心の中で忙しく考えを巡らせるのに、心の中がからっぽになってしまった感覚がする。
葉山くん、ちっとも残念そうじゃなかった。
悲しいのは、わたしだけか。
鼻の奥がツンとして、じわっと涙が出そうになった。
こんなの……
葉山くんが好きって認めるしかないじゃない。
気づかないふりをしてきた気持ち。
気づいたって閉じこめるしかない気持ち。
こんなわたしが、葉山くんを好きなんて。
許されるわけないから。