つくづく自分が嫌になる。

葉山くんにときめく自分が許せない。

足早に教室までの廊下を歩いていたとき、

「ちょっとあんた」

そう声をかけられたと同時にドン、と背中を強く押された。

「いたっ」

いきなりのことに前につまずき、コケてしまった。

床についた手とひざがジーンと痛む。

そんなわたしを見てキャハハと笑う数人の女子の笑い声に顔をあげると、

「あんた葉山くんと最近一緒いるじゃん。調子のってんの?」

「そ、そういうわけじゃ……」

背中を押してきたのは、飼育委員が一緒で、葉山くんにウサギ小屋の掃除は面倒だと同意を求めた派手な女子。

姫島さんだった。

そして、他にとりまきの女子が2人。

何人か通りすがりの生徒がチラチラとこちらを見ているけど、みんな関わりたくなさそうだ。

姫島さんはわたしを見下ろして、

「なんで、あんたなんかが葉山くんと一緒にいんのよ。うちが掃除手伝うって言ったら冷たく断られたのに。どんな手を使ったのか知らないけど、図々しいのよ」

低い声で言いにらみつけている。

そっか……この人、あのとき理科室を出ていった葉山くんを追いかけて手伝うって言ってたんだ。

「わたしはただ、ウサギの世話がしたかっただけで……」

「見え透いた嘘やめて」

(どうして、どうして。ずっと葉山くんと仲良くなるチャンスを待ってた。なのになのになのに。この女憎い)

激しく伝わる姫島さんの心の声に、わたしはうつむいた。

こんなに敵意のこもった声を久々に聞いた。

立ち上がりたいのに、こわくて足に力が入らない。

「今後葉山くんに関わるのやめてよね! 葉山くんも迷惑してるの気づかない? また関わったら、ただじゃおかないから」

姫島さんはそう言い捨てて去っていった。